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黒のサテンのパンプスが美しい

開演の直前になって、まるで奇跡のようにチケットが私たちのもとにやってきた。その二枚は続き席ではない。持ち主のカップルがさんざんもめた末に手放すことに決めたのも、どうやらそれが理由のようだった。生まれて初めて、私はバルコニー席に入った。番号を言うと制服の胸に銀色のメダルを下げた案内係の少年が、小さな鍵で席の扉を開けてくれた。そこにはすでに五人の観客がいた。最前列には、ほかのことなど目に入らないような若い恋人たち。持参したテープレコーダーの調子をさかんに気にしている愛好家らしい中年のひとりは男性。その後ろに、ふたりのマダムが座っている。そして、白髪まじりの髪を耳の下あたりでゆるく巻き、日に灼けた肌に白く輝くネックレス。光沢のある黒いサテンのダブルのスーツを素肌にきっちりと着て、そこにもネックレスと同じ、白い宝石ボタンが輝いている。もうひとりのマダムは黒のふくれ織りのスーツに、レースのボディをインナーに着て、襟元にはアンティーク風の凝った石の大きなブローチ。組んだ足元に黒のサテンのパンプスが美しかった。