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真実を知ることは不可能

1996年には、40万人を対象とした「女性の健康に関するコホート研究」が『アメリカ医学協会誌』発表された。この研究では、豊胸材を入れた女性に結合組織病の報告数がわずかに多いことを見出したが、これは禁止令以降の自己報告書をもとにした調査だった。1995年にNEJMに発表された9万人を対象とした「看護婦の健康調査」では、豊胸材と結合組織病との関連を見出すことはできなかったメイヨー・クリニックの研究が論文として発表された時期に、他にも数件の疫学的研究が進行中だった。そのうち二つは規模がきわめて大きく、全ての結合組織病と他のいろいろな愁訴(患者の訴え)を対象にしていた。最大のものは、健康関連の職業に従事する約40万人のアメリカ女性を対象とし、過去に遡って調査されたコホート研究で、その女性のうち1万1000人が豊胸材を入れていた。これは「女性の健康に関するコホート研究」(WomensHealthCohortStudy)と呼ばれ、1996年初めに『アメリカ医学協会誌』(JournaloftheAmericanMedicalAssociation)に発表された。この研究では、豊胸材を入れた女性に結合組織病の報告数がわずかに多いことを見出したが、残念なことに、報告書の病名が正しいかどうか確認するために医療記録を調べてみることをしていなかった。この調査が行われたのは、1992年のFDA禁止令とそれによって生じた世間の注目と法律活動の後だったので、こういう自己報告書をどの程度信頼すべきか判断するのはむずかしい。この研究の次の段階では、報告書の病名を検証する計画がある。もう一つの大規模な過去に遡るコホート研究は、1995年6月にNEJMに発表されたもので、9万人の看護婦のうち1183人が豊胸材を入れていたが、豊胸材と結合組織病との関連を見出すことはできなかった。メイヨー・クリニックの研究とこの「看護婦の健康調査」(NursesHealthStudy)の優れたところは、医療記録を調べることで診断の有効吐を確認したことだ。またそれら二つの研究では、明確に定義された結合組織病に加えて、あらゆる病的異常も調査された。それと言うのも、豊胸材による病気は古典的な結合組織病の通常の規準全てを満たすとは限らないかもしれない、という多くの人の意見を容れたためだった。結局、1994年以来、数件の疫学的研究で豊胸材と結合組織病とのはっきりした関連を見出せなかった。その他2件の疫学的研究では強皮症のみを扱った。強皮症は、皮膚の広範囲にわたる著しい硬化と癩痕化を特徴とする病気で、時には硬化と癩痕化は内臓にも及び(この場合は全身性硬化症と呼ばれる)、事例報告ではシリコーン豊胸材と最も密接に関連があるとされる結合組織病だ。この二つの研究のいずれも、豊胸材と強皮症の関連を見出すことはできなかった。また、慢性関節リウマチとSLEのみを扱った研究でも豊胸材との関連を示さなかった。したがって、1994年以来、数件の疫学的研究で、豊胸材と結合組織病と総合して考えると、豊胸材による危険があったにしても非常に小さいと予想される。これは、豊胸材が結合組織病と関連がないという意味だろうか?必ずしもそうではない。これまで説明したように、どの研究も関連を絶対的には証明できない。どんな研究も、どのくらい関連がありそうなのか、ありそうでないのかを示すだけだ。関連を見つけられなかった研究の一つ一つが関連はないという証拠を積み上げてゆく。しかしどの研究もサンプリングされた集団のみを扱っているので、関連を見逃す可能性はある。現実には無理だが、豊胸材を入れた全女性と入れていない全女性を調査した場合に限り、豊胸材が結合組織病の危険因子であるかどうかを確実に知ることができる。サンプリングによる研究は単に推定するだけだ。幸い、統計的手法で誤差の限界を計算できるが、誤差の限界は真の危険の大きさによって変わるだけでなく、集団の規模によっても変わってくる。例えばメイヨー・クリニックの研究では、豊胸材と結合組織病との関連を見出さなかったが、それは、この研究がそれほど大規模でなかったために、合理的な確信をもって3倍もの危険増加を除外できなかった、ということだ。しかしながら、この証拠に他の研究結果が加えられるにしたがって、関連はないという結論はますます強固なものになる。関連があるとした唯一の研究も、FDA禁止後の自己報告には偏向があると考えられるので、解釈がむずかしい。これらの研究を全部まとめて考えてみると、危険があったにしても非常に小さくなくてはならないだろう。それにもかかわらず、少数であるにせよ、豊胸材が結合組織病の原因である可能性、あるいは、わずかに関与している可能性は人によってやはりあるだろう。不可能なほど大規模な研究なくしては、真実を知ることは不可能かもしれない。
(参考)
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