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髪の毛が少し抜けた

最初は、主人のいない生活が心細くてたまらず、夜、いつも寝ころんでいたテレビの前に誰もいないのが、ポッカリ穴があいたようで妙に寂しく涙が止まらなかった私も、ニヵ月、三ヵ月が過ぎると寂しさにも慣れ、四女に手がかかることもあって、このうえ主人の世話を焼かずにすむことを、好都合に思うようになった。主人もまた、独身寮に入っていたので「食・住」に不自由はなく、電話で、「空気は汚いし、大地震はいつ起きてもおかしくないし、どうせ三、四年で広島に帰れるんだろうから無理して来なくていいよ」と、言ってきていたので、私も、夏休みに引っ越すという当初の予定から、一年くらい様子をみてみようという気持ちに変わってきていた。そんな時、三女の円形脱毛を見つけたのである。三女を寝かせたあと、主人に電話して事情を話し、一日も早く引っ越したいと伝えた。主人も私も子供たちの心の中まで考えるゆとりがなかったことを深く反省した。髪の毛が抜け落ちるまで寂しい思いをしていたなんて、そして、一番近くにいながら、それにまったく気づかなかったなんて、今思い出しても涙が出る。寂しい思いをするより夜中に目を覚ます方がまだいいと、その夜から三女を私の隣に寝かせ、本も読んでやった。娘は、泣き声で目を覚ますこともなく、ぐっすり眠った。こんなことならもっと早く一緒の部屋で寝ればよかった、とつくづく思った。当時、小学四年と二年の娘には、「○○ちゃんは、お父さんはいないし、お母さんはゆみにかかりっきりで寂しかったの。だから、髪の毛が少し抜けたんだけど、これはみんなが○○ちゃんにやさしくしてあげれば自然になおるものだから、絶対にからかったりしないでね」と、言い含めた。二人は神妙な顔で聞いていたが、「わかった」と、約束してくれた。今思えば、この二人とて寂しい気持ちは同じだったと思うが、約束を守ってくれたことはありがたかった。翌日から病院でもらった薬を塗り始め、その効き目があったのか、しばらくするとうぶ毛が生えてきた。だが、何より効いたのは、暑い最中に引っ越して、パパと一緒に暮らせるようになったことだろう。
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